○明暗法の理解「描線による面表現」

5、作例集(自画像)
 どのようなモチーフの表面も、立方体、円柱、球のバリエーションとして描くことができる。ただし、材質の問題には十分な考慮が必要である。自画像で描かれているのは顔であるが、特別に表情が豊かなものだけに、単純な面表現として描くだけでは問題がある。面を表現する線が、同時に皮膚感や表情の表現としても意図される必要があるのである。さて、鉛筆による線的表現の作例、面的表現の作例、そして木炭による表現の作例を比較してみよう。


 鉛筆による表現(ハッチングを生かした表現)

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 鉛筆の線表現的側面を生かした作品である。近寄って見ると、かなりタッチが荒いが、離れて見ると問題ないレベルである。線が面を客観的に表現しているだけでなく、皮膚の張り、表情の緊張感につながっているといえる。

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 全体的に少し荒々しい表現ではあるが、肩など大造りな部分を荒く描いているのに対して、唇など繊細な部分はハッチングを弱め、皮膚の表情を生かす繊細な表現に変えている。


 鉛筆による表現(塗り込みを生かした表現)

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 鉛筆の塗り込みを生かした作品である。繊細な塗り込み表現が、皮膚の表情や人物の居る空間の光りの状況までを感じさせている。線はクロスハッチングのように、表面全体をカバーしておらず、稜線的な部分にのみ感覚的に入れている。

 面表現にタッチを用いていない一方で、背景部分には物体の面表現ではない、画面の勢い、あるいは雰囲気をつくるような線がある点にも注目してほしい。


 木炭による表現
 木炭による表
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 木炭は鉛筆と比べると塗り込み的表現に適した素材であるが、作者は、輪郭部などに線を強く打ち出している。練り消しゴムを利用した白線である場合もある。

 しかし、ハッチングによる面表現は基本的になく、明暗法で描かれている。例外的に背景の表現として淡く用いられているが目立っている訳ではない。




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