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色を描写する(固有色から固有明度を抽出する)
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鉛筆デッサンでは、様々な色を持ったモティーフを描くが、実際に色料を用いる訳ではないので、色を明暗の階調に変換して描くことになる。
基本的には、それはモチーフが持つ明度を正確に再現するということである。
図Aは、24色の色紙を画用紙に貼り、それと同じ明度のグレーを2種の鉛筆を用いて表現したものである。平面としての色を平面としてのグレーに置き換える仕事は、陰影や空間による明度変化を考慮する必要がない故に、比較的やさしい行為であるといえる。しかし、パソコンを使って彩度を0にまで落としてみると(図B)、色によっては、かなり明度の認識が不正確であることがわかる。こうした訓練を繰り返すことで、色の持つ明度を正確に把握する力をつけることは可能だが、実は、それだけではまだ不十分なのである。
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↑図A ↑図B(無彩色画面) |
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色を表現する(色の印象を表す)
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固有明度を把握する上でさらに必要なのは、色の「印象」を表現することである。「色」に対しての「色味」の問題といってもよいだろう。これは、もはやモティーフの部分の色の問題ではなく、モティーフの全体、あるいは、作品全体の問題であるといってよい。こ
れまでの造形トレーニングで指導したように、色とは光りの現象であり、明度・色相・彩度という3つの軸を用いて、科学的に定義できるものであった。しかし、一方で色は、高度に文化的、心理的な現象でもある。地球上で同じように見えるはずの虹が、様々な土地の文化によって違う色に見えたり、同じ果物の色が、国によって違う色で感じられる。さらに、子供が描く太陽の色が文化によって赤であったり、黄色であったりするというような問題である。それは、偏見といってすますべきことではないだろう。画家やデザイナーなどの表現者は、常に、受けての物の感じ方を考慮して、表現活動を行うべきである。表現の対象を、どこにしぼるかといった微妙な問題がそこには存在する訳で、ここで答えを書くことは不可能であるが、客観的な色の定義とイコールではない色の「印象」の存在について十分に考慮を払ってほしいものである。
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色の明度を描写する |
科学的問題 |
明るさ=反射光の量(ルックスで表わされる) |
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色の印象を表現する |
生理的問題 |
「人間の目は、好きな人を見る時、瞳孔が開く傾向にある」という説。
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心理的問題 |
虚無感のただ中にいる時、世界は灰色に見える。 |
言語の問題 |
「青々した」「蒼い」「赤い」と「紅い」のニュアンスの違い |
文化的問題 |
「りんご=赤」「レモン=レモン色」という刷り込み |
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